NORTHERN ENGLAND 1983-1986 by Michael Kenna

アメリカ在住のイギリス人フォトグラファー、マイケル・ケンナ(Michael Kenna)の作品集。

マイケル・ケンナの写真家としての壮大な遍歴の物語の始まりの時期をうかがい知ることができる1冊である。40年近くも前に撮られた写真の中には、馴染みのあるものや有名なものもあるが、これまでに一度も出版されたことのない作品が大半を占めている。このイメージは、ネガのままのファイルとしてしまわれたまま、長い間日の目を見ることを待っていた。通常なら、ケンナはあちこち旅をしているので、膨大な数のネガを印刷するところまでは手が回らない。新型コロナウイルス感染症の大流行とロックダウンによって初めて、彼は自分のアーカイブを見直し、長い間忘れ去られていたこれらのイメージを再発見し、暗室で現像するに至った。ここには、今ではほとんどすべてが変わってしまっているが、ケンナが若かりし頃のイングランド北部の姿が写し出されている」ー イアン・B・グラバー博士による序文より

イングランド北部の小さな工業都市ウィッドネスに生まれた作者は、貧しい労働者階級でありカトリック教徒のアイルランド人一家に生まれ、6人兄弟の末っ子として育った。司祭を目指して7年間神学校に通ったが、バンベリー美術学校からロンドン・カレッジ・オブ・プリンティング(現ロンドン・カレッジ・オブ・コミュニケーション)に進学し、70年代後半にアメリカに移住した。80年代初頭に撮影したランカシャー州とヨークシャー州は、ただ隣り合っているだけでなく、工業の発達に関して多くの共通点を持っていた。互いに競い合っていたこの2つの地方を隔てるペナイン山脈に偏西風があたるため、ランカシャーでは雨がよく降る。木綿と羊毛という強力な織物工業が発達し、無数に建てられた繊維工場、運河、鉄道、煙突、労働者の住む棟続きのテラスハウスが、ジメジメとした風景に一役買っていた。この地の織物工業は20世紀後半まで繁栄し続けたが、その後突然急速に失速し、最後には消滅した。作者がこの地方に戻り、昼夜を問わず撮影したのは、まさにこの衰退期だった。

イングランドを撮った初期の作品によって名声を獲得し、国際的に評価されるようになったが、この時期の作品を見返して数多くの未現像のイメージを発見したのは、つい昨年、2020年のことだった。2021年に作品集として刊行。当時をしのばせる綿布をクロス張りした台紙にモノクロのイメージが綴じ込まれている。

by Michael Kenna

REGULAR PRICE ¥11,550  (tax incl.)

hardcover
96 pages
254 x 330 mm
black and white
limited edition of 3,000 copies
2021

published by NAZRAELI PRESS