OH ME OH MY by Christine Sun Kim
ベルリンを拠点に活動するアメリカ人アーティスト、クリスティーン・サン・キム(Christine Sun Kim)の作品集。
本書は、2022年9月から2023年1月にかけてカナダ・バンクーバーの「コンテンポラリー・アート・ギャラリー(Contemporary Art Gallery, Vancouver)」とカナダ・サスカトゥーンの現代美術館「レミー・モダン(Remai Modern)」、2023年2月から7月にかけてニューヨーク州の「RANCES YOUNG TANG TEACHING MUSEUM & ART GALLERY」、2023年8月から12月にかけてオハイオ州の「The Gund at Kenyon College」で開催された展覧会に伴い刊行された。
先天的に聴覚を持たない作者が生み出すドローイング、ビデオ、壁画作品は、聴覚世界における耳が不自由な人々のコミュニティでの経験を中心に据えている。
本書では作者が制作してきた革新的な作品群を、エッセイやテキスト、考察、インタビュー、作品の豊富な図版を通して紹介する。音が持つ視覚的、身体的、政治的な側面を作品の中で最も重要な位置付けとするアーティストである作者は、「音は専ら聴覚的な経験のみである」という概念に挑む。
「アメリカ手話(American Sign Language / ASL)」を母国語とし、楽譜、円や表や標識などのインフォグラフィックスなど、さまざまな情報システムに由来する要素を用い、パフォーマンス、ドローイング、ビデオ、レクチャーなど多様な媒体を通じ、皮肉混じりでユーモラスな視覚的語彙を展開している。音が聞こえる世界と耳が不自由な人々のコミュニティとの間に生じる力の不均衡に関心を引くことを目的とし、異なる立場や異なるコミュニケーションの形を持つ人々同士の相互作用から生まれる生産的な可能性と創造的なエネルギーを称えるべく活動する。