THE POLISH RIDER by Ben Lerner & Anna Ostoya
アメリカ人小説家・詩人のベン・ラーナー(Ben Lerner)とポーランド人アーティストのアナ・オストヤ(Anna Ostoya)によるコラボレーション作品集。2015年冬、ラーナーはオストヤの人生と作品を物語の要素として組み込んだ短編小説『 The Polish Rider』を執筆した。Uberの後部座席に自身の作品である2枚の 絵画を置いてきてしまったオストヤ。物語は、消えたキャンバスを探すオストヤの手助けをしながら、言葉を使って視覚的な表現を凌駕するにはどうすればよいか、"散文を通じて失われた絵画を取り戻す" ことを夢想している。この小説が『The New Yorker』誌で発表されると、オストヤの昔の作品をベースにしてラーナーがでっちあげた 絵画をオストヤは実際に描き、言葉を一言一句変えることなくこの小説を変身させてしまった。さらにオストヤは、自分自身をインスピレーションとして書かれた物語への回答として一つのシリーズを制作している。メディアとジャンルの垣根を越えて続く会話から生まれた本シリーズでは、上記の物語に加え、オストヤの実際の作品に触発されてこのショートストーリーが誕生した過程や、オストヤとラーナーのやり取りを形作った偶然の出来事や奇妙な手紙について説明したエッセイも収録。ラーナーに小説を書かせ、かつその物語に新しい展開を与えたオストヤの作品構成は、単に何かを説明している訳ではない。そうする代わりに、オストヤの絵画は文学が決定的な発言権を得ようとするのを阻止している。本書をどれか一つのカテゴリーに当てはめることはできないが、ここに収められた物語を読みイメージを見つめていると、事実とフィクション、オリジナルと複製、文章とイメージといったものの間にある境界線が明滅するという不思議な感覚を味わうことができる。