PONTUS HULTÉN AND MODERNA MUSEET: FROM STOCKHOLM TO PARIS by Pontus Hultén
スウェーデン人キュレーター、ポントゥス・フルテン(Pontus Hultén)の作品集。本書は、「ストックホルム近代美術館(Moderna Museet)」の館長を務めたフルテンのキュラトリアル実践に関するリサーチ・プロジェクトを収録した1冊。2006年にこの世を去るまで、生前国内外を問わず、主要とされる美術館長の一人であり、「ストックホルム近代美術館」、パリの「ジョルジュ・ポンピドゥー国立芸術文化センター(Centre national d’art et de culture Georges Pompidou (CNAC-GP)、以下ポンピドゥー・センター)」、ヴェネツィアの「パラッツォ・グラッシ(Palazzo Grassi)」など重要な美術施設を築き上げてきた。
2015年秋、アートコレクション、アーカイブ、ライブラリーに基づく研究と学習として「Pontus Hultén and Moderna Museet」が始動。本プロジェクトは、キュレーター並びに館長としてのフルテンの活動を掘り下げ、伝説的な1960年代の遺産と今日の美術館への示唆を探ることを目的とし、『Pontus Hultén and Moderna Museet. The Formative Years』(2017年 )と本作『Pontus Hultén and Moderna Museet. From Stockholm to Paris』(2023年)の2冊にまとめられた。第1作目はフルテンが館長に就任し「ストックホルム近代美術館」が国際的な評価を得たその初期の時代に焦点を当て、本作は同美術館に在籍した1960年代半ばから1973年までの後期を追う。
作者は1958年から1973年まで「ストックホルム近代美術館(Moderna Museet)」が開館した1958年に勤め始め、1960年には館長に就任、1973年までそのポジションを担った。在任中に所蔵コレクションを構築、「Movement in Art」(1961年)、「American Pop Art: 106 Forms of Love and Despair」(1964年)、「She–A Cathedral」(1966年)、「Andy Warhol」(1968年)といった代表的な展覧会を開催し、結果「ストックホルム近代美術館」は世界の舞台でその評価が確立された。作者は2005年に自身のプライベート・コレクションを約800点、ライブラリーに蔵書を約7,000冊、そしてアーカイブを「ストックホルム近代美術館」に寄贈している。
本書では、ギッテ・オルスコウ(Gitte Ørskou)による序文の流れから「Andy Warhol」(1968年)、「Bernd and Hilla Becher」 (1970年)、ヨーゼフ・ボイス(Joseph Beuys)とギュンター・ユッカー(Günter Uecker)のプレゼンテーション(1971年)、「Utopias and Visions 1871–1981」(1971年)などの企画に焦点を当てた長いイントロダクションが続く。次章では、「She–A Cathedral」展と、1968年に「ニューヨーク近代美術館(MoMA)」のために企画された「The Machine as Seen at the End of the Mechanical Age」について論じられている。
そこに続き、作者の蔵書を分析した最後のエッセイでは、1988年から1995年まで作者が設立したパリの美術学校「造形芸術高等研究所(Institut des Hautes Études en Arts Plastiques / IHEAP)」を取り上げる。また、フランスの美術雑誌「オーパス・インターナショナル(Opus International)」に掲載されていた1971年当時のインタビューも収録、美術館の未来について考察する。
序文を美術史家であり、以前「ストックホルム近代美術館」の館長を務めたギッテ・オルスコウが著し、同美術館のキュレーターであるアニカ・グンナーソン(Annika Gunnarsson)とイルヴァ・ヒルストローム(Ylva Hillström)とアンナ・テルグレン(Anna Tellgren、美術史家であり作家、キュレーターのラース・バング・ラーセン(Lars Bang Larsen)、美術評論家でありジャーナリストのヤン・パヴィ(Yann Pavie)らも寄稿。