A MAGAZINE CURATED BY FRANCESCO RISSO
『A Magazine Curated By』は、イタリアの老舗メゾン「マルニ」のクリエイティブ・ディレクターでありファッションデザイナー、フランチェスコ・リッソ(Francesco Risso)を第23号のゲストキュレーターとして迎える。
アーティスト、ミュージシャン、作家、フォトグラファー、家族や友人など、作者と親しい様々な人々の力を借りて作られた本作は、現代において「生きる」とは何を意味するのかを問いかける無数の視覚的・哲学的な刺激を通じて、印刷物をアナログ的な手法で探求している。
いくつものスクラップブックを1つにした本というアイデアに基づき、寄稿者による20の作品を240ページに渡って掲載。各作品は、主人公(あるいは主人公たち)の心と精神につながる概念上の「窓」となり、彼らの創作における手法や過程を垣間見せてくれる。一枚の肖像画で幕を開ける各章は、手書きまたは機械的にタイプしたページから、ペーパーコラージュ、イラスト、絵画、いたずら書き、手作業で修正した写真まで、ありとあらゆるローファイなテクニックを使って、それぞれが独自の世界観を表現している。
また、エンボス加工のテープを貼ったようなトロンプ・ルイユ(だまし絵)の背表紙、エンボス加工した「A」の文字、UVスポット印刷した作者本人の肖像画など、遊び心たっぷりに様々な加工を組み合わせた表紙は、赤いカバーのビンテージのスクラップブックを模している。
本書は、軽妙洒脱でありながら深く洞察した視点から、形あるもの、自然、人間の精神を理解する作者の底知れない想像力を記録したスクラップブックである。デザイナー自身が様々なキャラクターに扮し、フォトグラファーのセルジオ・カティヴェッリ(Sergio Cattivelli)が撮影した写真シリーズから、永遠の存在をテーマにアーティストのミケーレ・リッツォ(Michele Rizzo)が粘土を彫って作った彫刻、フォトグラファーのフランチェスカ・ソレンティ(Francesca Sorrenti)が映像に収めたバイク乗りの享楽的な週末の記憶まで、徹頭徹尾自由奔放な空気が漂っている。
各寄稿者を撮った21枚のオリジナルポートレートを各章の初めに配置したことにより、色彩豊かで気まぐれな作者の感性と、華麗で生き生きとしたマルニの世界が一作品集としてきれいに纏められている。
シェルドレイク兄弟(Sheldrake Brothers)の物語で使用されたドロシー・シン・チャン(Dorothy Sing Zhang)撮影のプリント『George’s Marni Sock and Mushroom Omelette』(2022年、 120x90mm)が1枚、本誌内に差し込まれている。
コントリビューター:
アンドレア・アルテミシオ、ババク・ラッドボーイ、カミラ・ニッカーソン、チャーリー・フォックス、コスモ&マーリン・シェルドレイク、ダン・コーレン、デヴ・ハインズ、ドロシー・シン・チャン、フラミニア・ベロネージ、フランチェスカ・ソレンティ、ジェイミー・ホークスワース、ジョナ・ヒル、ジョーダン・ヘミングウェイ、ジュリアン・ディス、レクシー・スミス、ローラ・モンテス、ミケーレ・リゾ、レイチェル・チャンドラー、サラ・ムーンヴズ、ソフィー・フォン・ヘラーマン、テラフォーマーズ 、ウィルフリッド・ウッド
Francesco Risso:
2016年に「マルニ」のクリエイティブ・ディレクターに就任。「マルニ」のエッセンスにエキセントリックさと知的さをミックスさせながらそこに独自の美学を取り入れ、ブランドを新たな時代へと導く。イタリアのサルディーニャ島で生まれたリッソは、生まれてからの数年間、家族とジェノヴァで暮らすために移住するまで、両親と船上で過ごした。そしてジェノヴァでよく知られるテーラーであった祖母から技術を学んだのち、16歳でフィレンツェへ移り、ポリモーダ校に通い始める。その後、ニューヨークのFITファッション工科大学を卒業し、ロンドンのセントラル・セイント・マーチン校でルイーズ・ウィルソン(Louise Wilson)のもと修士課程を終える。卒業後は「ブルマリン」でアンナ・モリナーリ(Anna Molinari)に師事、「アレッサンドロデラクア」、「マロ」を経て、2008年に「プラダ」のウィメンズ・ウェアとプロジェクトに参画。2017年の秋冬コレクションにて、「マルニ」でのデビューを果たす。
MARNI:
革新的かつ多角的なアプローチを繰り広げるファッションブランド「マルニ」。厳格さを持ちながら反体制的な言語を通じて個性を世に表現する。「マルニ」とは、フレンドリーかつヒューマニスト的価値と、素材や色への実験的なアプローチ、またプリントや形状をミックスする唯一無二のセンスを組み合わせてきた「マインド」であり「遊びの精神」である。また、「マルニ」はフランチェスコ・リッソのビジョンを写す美のパラダイムである。奇抜とも言えるその品格は、可能性の幅、理想の追求、美術界との対話を常に交わすアヴァンギャルドな魂を持つライフスタイルであり、特別なコラボレーションやカプセルコレクションにおいて究極とも言える新たな表現を都度見出し続けている。優美であり破壊的でもあるその視点は、職人による技術の真価を尊重し、素材の精巧さとデザインのオリジナリティを高め続けている。レディース、メンズ、キッズのプレタポルテ(既製服)コレクション、バッグ、靴、ジュエリー、眼鏡など幅広く展開し、世界中のブティックやハイブランド小売店とのネットワークを通じて広められている。1994年創設、2013年より、ラグジュアリー・ブランドを中心に組織されているOTBグループに所属する。
A Magazine Curated By:
『A Magazine Curated By』は、毎号ファッションデザイナーをゲストキュレーターとして招き、その世界観を探求するユニークなコンセプトマガジン。編集部とのコラボレーションにより、ゲストキュレーターが革新的である独自のコンテンツを通して、文化的な価値観や美学を表現する。各号では、人々と情熱、物語、感情、好奇心、自然さ、真正性という、デザイナーの理念を讃えている。ベルギー初のファッション雑誌を誇る本誌は、今最も影響を与えているファッションデザイナーの視点を親密に繰り広げており、国際的に高い評価を得てきた。
記事:デザイナーとともに革新を続ける『A Magazine Curated By』編集長ダン・サーリーの雑誌作り(THE FASHION POST)