THE WHITE COAT by Alex Katz

アメリカ人アーティスト、アレックス・カッツ（Alex Katz）の作品集。2021年に「GRAY CHICAGO 」で開催された展覧会に伴い刊行された。本作は、2020年から2021年の間に制作された最新シリーズであり大型のポートレイト作品「Vivien in White Coat」を11点収録。自身の義理の娘であり写真家、映像作家のヴィヴィアン・ビッテンコート（Vivien Bittencourt）が白いコートを身に纏う姿を描いている。

白、黒、鮮やかな水色で統一された本シリーズは、ダイナミックな構図でモデルを描いており、色彩や形、線の選び方を鋭い視点で見極め、ポートレイトが持つ即時性を保ちながら、具体と抽象、親密な近さと保たれた距離感、幾何学性と人間的な仕草という相まった特徴を絶妙なバランスで描き上げている。

作者は本シリーズを、束の間の瞬間瞬間をスナップショットで捉えたような連続性のある構図で描いている。にもかかわらず、神秘的な雰囲気を纏い、絵画の中のビッテンコートは鑑賞者の方を向いたり離れたりして絶えず動きを感じさせる。自身に近しい者を反復させて描くことが、親しみを生み、観る者をその親密さを漂わせた優美な空間へと誘う。しかしそれでいて、描いた人物の生活や人生を剥き出しにはせず、アイデンティティに適切な距離を持つことに神経を使い、我々が軽率に作品入り込まないよう描いている。

キュレーターであり作家のジャン・ヴァワート（Jan Verwoert）によるエッセイも収録。