WHAT'S WRONG WITH REDISTRIBUTION? by Wolfgang Tillmans
現代美術界で重要な賞の一つである「ターナー賞」を2000年に受賞し、ロンドンとドイツを拠点として活動するドイツ人フォトグラファー、ヴォルフガング・ティルマンス(Wolfgang Tillmans)の作品集。ベルリンのハンブルガー・バーンホフ現代美術館で2015年での展覧会開催に伴い刊行された。複数のパートで構成されたテーブルインスタレーション「Truth Study Centre」は、初めて発表された2005年以来、作者の展覧会には欠かせない要素になっている。制作された時の地域の状況や時事問題が発端となることが多いこのシリーズは、混乱した時代に明確な視点を確立しようとする試みの記録である。
2007年の「Manual」に続き「Truth Study Centre」シリーズの作品集第二弾となる本書ではじめて、このプロジェクトの規模と複雑さの全貌が明かされた。高画質の図版を惜しみなく使い、今に至るあり得たかもしれない時の流れを320ページにわたって提示している。もともと使っていた表現手段である写真という枠を遥かに超えて、作者はテーブルインスタレーションというフォーマットの中でさまざまな反対意見、声明、比較などを並列してみせた。自ら設計した木製テーブルのサイズは恣意的なものではなく、長さ78インチ(約198センチメートル)あり、4種類ある英国の標準的なドア幅のうち一つを使って作られている。作者曰く、写真、テキスト、オブジェが「自らの重さによってのみその場に留まっている」新しい形のコラージュを、豊富な図版によって概観する1冊。ニューヨーク・バーミンガム大学のトム・マクドナー教授のエッセイでは、ハンナ・ヘッヒ(Hannah Höch)からロバート・ラウシェンバーグ(Robert Rauschenberg)へと続く20世紀のコラージュの文脈の中で作者のプロジェクトを読み解いている。本書は、作者のベルリンのアトリエで制作された。付録のフレネルレンズ(拡大鏡)で印刷された小さな文字やコンテンツを拡大して見ることができるようになっている。