PEOPLE IN TROUBLE LAUGHING PUSHED TO THE GROUND by Adam Broomberg & Oliver Chanarin

ロンドンを拠点とするアーティスト・デュオ、 アダム・ブルームバーグ & オリバー・チャナリン(Adam Broomberg & Oliver Chanarin)の作品集。北アイルランド・ベルファストのドネガル・ストリート 23番地にある建物の2階の小さな一室を占める「Belfast Exposed Archive」には、北アイルランド紛争を記録した14,000点以上のモノクロのコンタクトシートが保管されている。これらの写真を撮影したのはプロの報道カメラマンや一般市民であり、デモ運動、葬式、テロ行為だけでなく、お茶をしたり、女の子にキスしたり、列車を眺めたりなど当時の暮らしの中の何気ない風景も含まれている。「Belfast Exposed」は、「 The Troubles(厄介ごと)」と呼ばれた数十年に及ぶ長い紛争の時代に行われたイギリス政府の軍事行動を記録したイメージの慎重な管理に対する憂慮を受けて、1983年に創設されたストックフォト・ギャラリーである。アーカイブ中のイメージが選択、承認、選出されると、その印として青、赤或いは黄色の丸いシールがコンタクトシートの表面に貼られていた。本書では、これら点の位置によってイメージの見せ方を決めている。丸いシールの下に隠れた部分、言い換えれば、そのイメージが選ばれた瞬間に見えなくなった部分を抜き出して各頁の中央に配置している。記録係が適当に貼ったシールによって、コンタクトシートから切り出され、偶然的に形成されたこれらの断片的なイメージは、本書によって日の目を見るまで保存庫の暗闇の中で長い間静止していた被写体の欲望や苛立ち、途中で断ち切られたコミュニケーションなどの瞬間を今ここに再生し、それぞれが一つの世界として完結している。イメージの至るところに見受けられる跡は、コンタクトシートの表面につけられたものであり、これらの写真が多くの人の手に取られてきたことをほのめかす。その中には、山のように集められた種々様々なイメージに順番をつけ、何度も分類を繰り返してきた歴代の記録係も含まれている。このアーカイブは何年もの間一般公開されており、閲覧者の中には自分のイメージをマーカーやインクで塗りつぶしたり、はさみで切り取ったりするものもいた。何代も続く記録係たち、写真の編集者、法務関係者、アクティビストなどが残してきた痕跡に加えて、こうした非常に個人的な情報の抹殺の跡もありありと見て取ることができる。これらは、匿名の存在のままでいたいという人々の意思の表れである。

by Adam Broomberg & Oliver Chanarin

REGULAR PRICE ¥7,425  (tax incl.)

hardcover
416 pages
203 x 230 mm
black and white
2011

winner of the Deutsche Börse Photography Foundation Prize 2013

published by MACK