COUP DE DÉS (COLLECTION) BOOKS AND IDEAS AFTER MALLARMÉ by Michalis Pichler
ドイツを拠点に活動するアーティスト、ミカリス・ピヒラー(Michalis Pichler)の作品集。
ポール・ヴェルレーヌ(Paul Verlaine)と並ぶフランス象徴派の代表的詩人ステファヌ・マラルメ(Stéphane Mallarmé)による最晩年作品『
賽の一振り(COUP DE DÉS)』。同作は刊行以来、非常に多くのエディション、バージョンを重ねている。本書は、その膨大な作品の数々と、歴史的かつ現代的なエディション、そして他の作家によるアプロプリエーションが集められた一冊である。
マラルメは、片側のページにレイアウトされる詩を反対側のページにも配置することによって、それぞれのページを一つの独立した構成要素として存在させた。見開きページで描かれる言葉の配置と、テキストの断片・周囲の余白との間に生まれる相互作用、これは星座と空が生む作用に似ており、マラルメが文学作品に用いた比喩である。マラルメの「星座」という概念は、例えば、メキシコ人アーティスト、
ウリセス・カリオン(Ulises Carrión)の「新しい」本のヴィジョンに繋がるものがある。1975年にカリオンが記したところによると、「古い芸術においては、最後のページを読むのに最初のページを読むのと同じくらい時間がかかる。新しい芸術においては、読むリズムが変わり、速くなり、スピードアップするのである」。
本書では豊富に図版が用いられ、アネット・ギルバート(Annette Gilbert)、クレイグ・ドワーキン(Craig Dworkin)、リュック・ボルタンスキー(Luc Boltanski)、アルノー・エスケール(Arnaud Esquerre)、関口涼子ら第一線で活躍する編集者や研究者陣による評論的エッセイを通じ、マラルメの傑作に対する洞察とアプロプリエーションの文脈を述べている。