SONIA DELAUNAY: LIVING ART by Sonia Delaunay
ロシア帝国(現ウクライナ)出身のアーティスト、ソニア・ドローネー(Sonia Delaunay)の作品集。2024年2月から7月にかけて「バード大学院センター(Bard Graduate Center)」内ギャラリーにおいて開催された展覧会に伴い刊行された。本書は前衛芸術家でありデザイナー、事業家であった作者を讃える一冊であり、境界線を突き破るようなそのアプローチは、本作の学際性の高さやインスピレーションに満ちた造本にも色濃く反映されている。
直近10年間で最も作者の研究に多大なる貢献をもたらしたと評される本書は、その指標に新たな基準を与えたと言える。従来見られるような年代順の編集を用いず、ジャンルの垣根を超え、画期的にまとめられた研究結果を紹介する。それは、光と色彩という独自の視覚言語を用い、素材の制約を受けずに創作し続けた作者が生来持つ多才さと情熱を証明するものでもある。
テキスタイル、ファッション、インテリア、ブックアートなどの作品が研究者たちによって分けられた26の章に収録されており、その構成は、作者のセルフ・プロモーションや起業家としての惜しみない努力、受け継がれていくものを築く尽力、そして協働者による膨大なネットワークに対し新たな洞察をもたらしている。
映画、モザイク、タペストリー、インテリア・デザインなど、これまであまり研究されてこなかったテーマを交えた分析は、技術の進歩をもたらしたエネルギーと職人技が生み出す美を活用して芸術と生活を一体化させようとした作者の生涯を通じた努力に対し包括的な視点を読者に与えるだろう。
作者のアトリエのメンバーのうち唯一の存命人物であるパトリック・レイノー(Patrick Raynaud)が著したエピローグを収録。また、オランダ人グラフィックデザイナー、イルマ・ボーム(Irma Boom)が手がけた装丁は、レイアウトとタイポグラフィに向けた作者自身のアプローチを採用し、過去と現在が一体となった、本書自体が芸術作品となるような一冊に仕上がっている。