POR SÍ MISMO by Lawrence Weiner
アメリカ人コンセプチュアルアーティスト、ローレンス・ウェイナー(Lawrence Weiner)の作品集。本書はスペイン・マドリードのレティーロ公園に建つクリスタル宮殿(クリスタルパレス / Palacio de Cristal)で2001年4月から6月に開催された展覧会に伴い刊行された。宮殿内やÁngel Caído像、ソフィア王妃芸術センター(Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía)の図書館など様々な空間に作品を介入させている様子も掲載されており、作者が施した芸術的な展示空間と公共空間、私的空間が関わり合っている。このように作品を設置することで、作品を構成する言葉を巡るようにツアーを行いたいと考える。また同時に「言葉」を公共の場での彫刻として扱うことで、芸術を思考するための新しい空間を構築する。言葉の意味、文法、句読点は、タイポグラフィ、文字のボディ、色、グラフィックの配置などメディアの特性と結びつき、彫刻の構成要素となる。また、宮殿の窓には金、銀、エメラルド、鋼鉄、塩、ダイヤモンドなどを素材を表す文字が描かれており、太陽の光が差し込むことでその文字の見え方が時間の経過によって変わり、同時に建物の外からも中からも、また床への投影からも読むことができ、物質性と非物質性の間に生じるダイナミックさを見て取れる。
テキストはかねてより行ってきたように、英語とインスタレーションが設置された国の言語を使用。本展のタイトル「Por sí mismo/Per se」は、アクシデントと対をなす「実体」を意味する。この形而上学的な名前は、作品に余分な手を加えていないことを示唆し、同時に作者が使用している素材が比喩的ではなく、文字通りのものであることを強調する。
数々の美術館のディレクターを務めてきたバルトメウ・マリ(Bartomeu Marí)がエッセイを寄稿。作者が作品制作の際に関心を寄せている「鑑賞者の知覚」に関する内容や、前述したような彫刻的に表現された言説を構成する文法、記号、タイポグラフィーの役割について分析している。また、キュレーターのアリシア・チリーダ(Alicia Chillida)と作者との間で交わされたファックスでの会話の記録も同時収録。オフセット印刷の6つ折りポスター付属。