RACHEL HARRISON'S STAGE FRIGHT by Rachel Harrison
アメリカ人アーティスト、レイチェル・ハリソン(Rachel Harrison)の作品集。本書は、2022年4月から6月にかけて、作者によるキュレーションで開催された展覧会に伴い刊行された。アートギャラリーである「LGDR」の創設者であり美術商のドミニク・レヴィ(Dominique Lévy)は、彫刻のフォルムに光を当て作品への熟考を促したいという思いから、20世紀の彫刻表現をキュレーションした展覧会を開催すべく作者を招いた。同展は、モダニズムの最も根幹たる主題である「人物像」への傾倒を考察する作品群で構成された。
ルイーズ・ブルジョワ(Louise Bourgeois)、コンスタンティン・ブランクーシ(Constantin Brancusi)、マルセル・デュシャン(Marcel Duchamp)、マリソル・エスコバル(Marisol Escobar)、アルベルト・アルベルト・ジャコメッティ(Alberto Giacometti)、アリーナ・シャポシニコフ(Alina Szapocznikow)らの作品を見せており、その作品群は、極限状態にある身体を表現し、バラバラに断裂したようなもの、必要なものだけに削ぎ落とされた形をしている。
それぞれの作品は、その存在をもって全体を代弁する「代理人」のような役割を果たしている。シャポシニコフの石膏作品「Ventre (Belly)」(1968年)の裂け目やひだが痛々しいほどの特異さで表現されていようと、マリソルの「The Blacks」(1962年)のようにジェネリック的な型を想起させようと、展示されている作品をまとめてみると、オブジェを経由してさまざまな人格の概念が具現化されているのが見て取れる。
展覧会の風景をふんだんに掲載し、あわせて作者による書き下ろしの文章を掲載。映画監督であるアルフレッド・ヒッチコック(Alfred Hitchcock)とフィギュアスケーターのペギー・フレミング(Peggy Fleming)による対話として構成されたテキストに仕上げられており、展覧会でのプレゼンテーション、そしてアーティスト自身の実践とアプローチを批評的に検証している。