THE LIVES OF DOCUMENTS - PHOTOGRAPHY AS PROJECT
モントリオールの建築ミュージアム、「CCA(Canadian Centre for Architecture、カナダ建築センターとも)」による、建築研究と実践における写真の現代的な役割を検証する作品集。2023年5月から2024年4月まで「CCA」で開催された展覧会に伴い刊行され、同センターと「WALTHER KÖNIG」との共同出版物となる。
本プロジェクトは、建築環境をリサーチする手段として、芸術作品・リサーチツール・記録の間に位置する写真というメディアを、「CCA」が研究、展示、プロデュースする長期プロジェクト三部作の第一弾である。「CCA」は設立以来、建築の分野だけでなく、研究機関やコレクションにおける写真の役割を再定義するために様々な先駆的な取り組みを行なってきた。それを鑑み、本プロジェクトはオープン・リサーチ形式の展覧会として企画され、「CCA」が所蔵する1970年代から現在までの写真家の作品を、未発表のプロジェクト、書籍、出版物のモックアップ、一部インタビュー、作品制作に関連する資料とともに展示し、その内容を書籍としてまとめた。
過去50年間における本分野の変容の閾値を定義することに決定的に貢献したアーティストや写真家の実践を、特定のトピック、例えば風景の概念からプロジェクト形式としてのアーカイブの複雑さなどに関連させて分析することを目的としている。写真言語に組み込まれた一つの性質として記録というものの考え方を受け入れ、我々の目に見える世界をモデル化しているメカニズムを問い、解釈する手段として、写真の妥当性と実際性を問う。
建築物や自然環境に関する視覚的な議論をするために、写真家はどのように画像を選び、並べ、提示するのだろうか。フォトグラファーのバス・プリンセン(Bas Princen)とフォトグラファー、ヴィジュアルアーティストのステファノ・グラツィアーニ(Stefano Graziani)が編集を手がけ、様々な写真家の研究資料、実践されているアーカイブ、制作過程を辿りながら、風景とその破壊、世界的なインフラ、親密性と内面性、都市と家庭空間と生活の条件といった概念を調査することで、我々の目に見える世界をモデル化している写真のプロジェクトを選定し、紹介する。
2者による本研究の旅路を追いながら、読者は、作家陣が「芸術的リサーチツール」として写真をどのように扱うのか、またその追求が進化し拡大していくプロジェクトをどのように考察しているのかを知ることになるだろう。スタジオ訪問、インタビュー、2者自身の写真プロジェクトをまとめた本書は、伝統的な建築の道具では表現できなかった、あるいは伝えきれなかった方法で、写真というものがいかに生活や建築のリアリティを明らかにし、表現に結びつけているかを強調する。
編集:ステファノ・グラツィアーニ、バス・プリンセン
表紙:潮田登久子
コントリビューター:ステファノ・ボエリ(Stefano Boeri)、グイド・グイディ(Guido Guidi)、畠山直哉、ホンマタカシ、ロニ・ホーン(Roni Horn)、アネット・ケルム(Annette Kelm)、ヘルト・ヤン・コッケン(Gert Jan Kocken)、アグライア・コンラッド(Aglaia Konrad)、スザンネ・クリーマン(Susanne Kriemann)、アーミン・リンケ(Armin Linke)、アリ・マルコポロス(Ari Marcopoulos)、リチャード・ミズラック(Richard Misrach)、マリアンヌ・ミュラー (Marianne Mueller)、フィリス・ランバート(Phyllis Lambert)、潮田登久子、ジェフ・ウォール(Jeff Wall)
ララ・アルマルセギ(Lara Almarcegui)、ルイス・ボルツ(Lewis Baltz)、ガブリエル・バジリコ(Gabriele Basilico)、ベルント&ヒラ・ベッヒャー(Bernd & Hilla Becher)、リン・コーエン(Lynne Cohen)、ルイジ・ギッリ(Luigi Ghirri)、ダン・グレアム(Dan Graham)、ヤン・グルーバー(Jan Groover)、ダグラス・ヒューブラー(Douglas Huebler)、ソル・ルウィット(Sol LeWitt)、ゴードン・マッタ・クラーク(Gordon Matta-Clark)、ブルース・ナウマン(Bruce Nauman)、 ミヒャエル・シュミット(Michael Schmidt)、トーマス・シュトゥルート(Thomas Struth)、マリアンヌ・ウェックス(Marianne Wex)